研究分野

分子栄養学、生化学、分子生物学、動物生理学、薬理学、薬物動態学、機器分析学

研究室で取り組んでいる主な研究課題

私たちの研究室では、以下の3つの研究課題を中心に取り組んでいます。

  • 脂溶性ビタミンを中心とした分子栄養学研究・創薬科学研究
  • 核酸GTPを中心とした分子栄養学研究・創薬科学研究
  • 新規白金錯体を用いた創薬科学研究
① 脂溶性ビタミンを中心とした分子栄養学研究・創薬科学研究

私たちは以下の内容を中心とした研究を行っています。

  • 脂溶性ビタミンの生体内代謝機構の解明
  • 脂溶性ビタミンが関連する加齢性疾患の発症メカニズムの解明
  • 脂溶性ビタミンの新規生理機能の探索および機能性食品への応用
  • 脂溶性ビタミン誘導体の創製による疾患治療薬の開発
  1. はじめに

脂溶性ビタミンの1つである、ビタミンKは1936年にデンマーク人のDamによって発見されました1)。Damはニワトリの雛を無脂肪食で飼育していたところ、皮下出血や貧血が認められ採血した血液が凝固しにくいことを発見しました。その後、様々な研究から抗出血性物質が脂溶性であり、肝臓や種々の植物体抽出物中に存在することを見い出しました。

Damは、この未知の栄養成分を血液凝固(ドイツ語のKoagulation)にちなんでビタミンKと命名しました。また、ThayerらはビタミンK1およびビタミンK2をそれぞれアルファルファと腐敗した魚肉から単離し構造を決定しました2)。ビタミンKは2-methyl-1,4-naphthoquinoneを基本骨格として、3位の側鎖構造の違いにより同族体に分類されます3)。天然には、植物由来のビタミンK1(phylloquinone:PK)と腸内細菌や発酵食品に由来するビタミンK2(menaquinone類:MK-n)が存在します2)。PKは3位にphythyl側鎖を有しておりますが、MK-nは、側鎖のisoprenyl基の数(n)に応じてn=1~14の同族体が存在します4)。MK-nのうち、n=4であるMK-4はPKと同じ側鎖長を有し、ビタミンK同族体で最も多岐に渡る生理活性を有することが報告されています5)。現在わが国では、PKは抗出血薬として、MK-4は骨粗鬆症治療薬として臨床応用されています。この他、合成品として2-methyl-1,4-naphthoquinone骨格のみの構造体であるビタミンK3(menadione:MD)が存在します(図1)。

図1:私たちの身の回りに存在するビタミンKおよびその構造式

2. ビタミンKの生理作用

食事から摂取されるビタミンKは、脂質の吸収、輸送系を介して標的組織へ移行すると考えられています。標的組織の細胞に移行したビタミンKは、細胞内の小胞体でビタミンKサイクルと呼ばれる酸化還元サイクルにより代謝されると同時に、γ-glutamyl carboxylase(GGCX)の補因子として働き、ビタミンK依存性タンパク質の活性化を担います6)。ビタミンK依存性タンパク質としては、血液凝固第II、VII、IX、X因子やプロテインC、Sおよび骨に分布するosteocalcin(OC)やmatrix Gla protein(MGP)などがあり、これらのタンパク質はGGCXにより、glutamic acid(Glu)残基がγ-glutamyl carboxyl化(Gla化)され、γ-carboxyglutamic acid(Gla)を有する活性型となり、血液凝固や骨形成に働きます(図2)。

図2:ビタミンKの酸化還元反応を担うビタミンKサイクル

ビタミンKサイクルにおけるvitamin K-dependent protein  (VKDP)のGla化作用に加え、TabbらはMK-4が核内受容体steroid and xenobiotic receptor(SXR)のリガンドとして遺伝子の発現を制御することを明らかにしました7)。SXRは、リファンピシンやクロトリマゾールなどをはじめ、様々な薬剤をリガンドとし8-10)、retinoid X receptor(RXR)とヘテロ二量体を形成して、標的遺伝子上のSXR responsive element(SXRE)に結合することにより、遺伝子の転写を調節しています11, 12)。MK-4はSXRを介して、薬物代謝酵素であるシトクロームP450(CYP)3A4、骨基質タンパク質であるosteocalcinやMGPの他、コラーゲンの蓄積に関与するmatrillin 2(MATN2)やtsukushi(TSK)の発現を誘導することが報告されていいます7, 13)。このSXRを介した作用は、ビタミンKのうちMK-4に特異的に認められるもので、PKやMK-7はSXRを介した作用を示しません(図3)。

図3:MK-4の核内受容体SXRを介した転写調節作用

さらに、IchikawaらによってビタミンKサイクルやSXRを介した作用以外に、MK-4 がprotein kinase A(PKA)のリン酸化作用を促進することで、細胞分化増殖因子であるgrowth differentiation factor 15(GDF15)およびカルシウム調節因子であるstanniocalcin 2(STC2)を介して骨形成を促進します7, 13, 14)。このようにMK-4は、GGCX活性、SXRを介した転写調節、PKAの活性化など様々な作用によってビタミンKの様々な生理作用を発揮します。

3. ビタミンKを中心とした今後の研究

現在作成中です。

② 核酸GTPを中心とした分子栄養学研究・創薬科学研究

以下のリンクの内容をご確認ください。

https://www.gtp-project.net/

③ 新規白金錯体を用いた創薬科学研究

現在、作成中です。

研究機器:Facilities

生化学研究室では分子栄養学に関する研究を行っていますので、生化学実験や分子生物学実験の装置や共同機器として質量分析器やフローサイトメーター等を所有しています。近隣の研究者の方で、使用を検討したい場合は、気軽にご連絡ください。

① 遺伝子実験用機器
② タンパク質実験用機器・吸光度計
③ 蛍光顕微鏡
④ 共通機器

大学で運用している機器ですが、生化学研究室が維持管理をしております。